次世代の建材として期待が高まるCLTは、諸外国に比べて導入が遅れていた日本でも、学校やオフィスなど様々な施設で活用が進みつつあります。国産材の有効活用の切り札として、また林業が抱える問題やSDGsの目標にも貢献すると言われ、官民一体となった取り組みが進められています。この優れたCLTを一般住宅に取り入れる上での課題やメリットとは?この記事で詳しく解説していきます。

CLTの特徴とメリット
日本では2016年以降にCLTの一般利用がスタート
CLT(Cross Laminated Timber)は、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系建材です。オーストリアを中心として発展し、イギリスやスイス、イタリアなどヨーロッパ各国に広がり、カナダやアメリカ、オーストラリアにおいてもCLTを使った高層建築が建てられるなど、各国で急速な伸びを見せています。木材特有の断熱性と壁式構造の特性を生かして、戸建て住宅や共同住宅、社会福祉施設、ホテルなどに幅広く活用されています。日本では2013年にJAS(日本農林規格)が制定され、2016年にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行され、一般利用が開始されました。

CLTのメリット
・施工が早く工期短縮
建築に使われるCLTはすべて工場で加工されてから搬入され、現場では組み立てるだけで済むため工期を大幅に短縮できます。また、熟練職人でなくても施工が可能なため、現場での作業が大変スムーズです。建築規模が大きく複雑になるほど、現場での工程の円滑化が工期の差を生むため、特に大規模建築においてCLTのメリットを発揮できます。
・軽量な材料
CLTは軽量な建材であるのも大きなメリットといえます。同サイズの重量で鉄筋コンクリート(RC)が1㎥当たり2.4 tであるのに対して、CLTは1㎥当たりわずか0.5 tと、約1/5も軽くなります。材料と建物が軽量化できることで、中規模建築での地盤補強の負担や基礎コストが軽減されるほか、輸送機関の燃料や費用の削減にも貢献します。
・地震に強い
CLTは優れた耐震性も発揮し、震度6強の地震を想定した振動台実験のテストでも、CLT建築の変形は3cm程度にとどまり、大地震の後でも損傷が少ないことが確認されています。
・優れた耐火・耐熱・断熱性
木造建築では火に対する弱さに不安を感じるかもしれませんが、CLTの表面は炭化するものの、毎分約1㎜のペースでゆっくり燃え進み、厚さ90㎜の壁が1時間燃えても焼け落ちないことが確認されています。また断熱性にも優れ、厚さ90㎜のCLTはコンクリート120㎜とほぼ同じ断熱性能を持ちます。熱伝導率も木はコンクリートの1/10、鉄の1/350と非常に低く、CLTは快適な室内環境も実現します。

CLTが注目される理由
・林業・木材産業の活性化
いま、国内の森林では、少子高齢化や山間部の過疎化の影響により、林業の担い手が減少し荒廃する森林や人工林が増加しています。従来の建材より多くの木を消費活用できるCLTは、国内林業を盛り返す起爆剤になるものと期待されています。
・CO2排出量削減や森林保全
CO2を削減するためには、古い木を切り、炭素吸収力の高い若木を植えて育てる必要があります。いま、国内の人工林の約半数が伐採適齢期を迎えており、大量の樹木をCLTに生かすという森林資源活用は、持続可能な森林保全につながります。

CLTの活用状況は?

公共施設や商業施設におけるCLT活用の現状
脱炭素やSDGsといった世界的な動きの中で、国内においてもCLTは多くの中高層建築物で活用されています。大手建設会社も木造化プロジェクトに積極的に取り組んでおり、木造ハイブリッドやビル内の耐震壁などにCLTを活用しています。公共建築物では、東京2020の国立競技場をはじめ、学校、美術館、体育館、社会福祉施設、消防署などで活用されています。そのほか、商業施設、倉庫、工場、共同住宅、オフィスビル、店舗、トイレなど民間建築物でも多く採用されています。
一般住宅におけるCLT活用の現状
CLTは多くのメリットがあるにも関わらず、普及が十分進んでいるとは言えません。ビルや公共施設など大型建築物においてCLTを全面的に採用する事例が多くありますが、CLTの使用量が多くパネルも大きくなるため運搬コストが高くなります。また、複雑な構造計算を必要とし、計画から着工まで納期がかかる傾向もあります。一般の戸建て住宅においてはCLTは強度が必要以上に高く、工法や施工の難しも普課題となっています。政府はCLTに補助金や助成金を設けるなど積極活用できる環境の整備を進めており、官民一体となった取り組みが必要となります。
画期的な「CLTハイブリッド構法」を 一般向け木造戸建て住宅の施工販売で標準化
ライフデザイン・カバヤは、木造軸組工法を基準として、従来からある耐力壁に代わり、CLTパネルを耐力壁として組み込んだ、新木造軸組工法「CLTハイブリッド構法」を開発しました。一般向け注文住宅の施工販売について同構法を標準化していきます。
「CLTハイブリッド構法」は、住宅の形や広さによって柱や梁の間にCLT耐力壁を組み込むことで、CLT量が増えすぎず、通常の木造住宅と同程度の工期で対応でき、価格も抑えることができます。CLTパネルを建物内に適材適所に配置することで耐力壁の配置を少なくし、耐震等級3の高い耐震性能を保持しながら、間取りの自由度も実現。さらに、CLT耐力壁の45分準耐火構造の国土交通大臣認定を取得し、準耐火構造の在来軸組工法において、CLTをそのまま見せる現し仕上げを可能としました。
「CLTハイブリッド構法」は、木の温もりと安らぎを感じながら、開放的な空間を満喫する住まいが実現できるのです。

まとめ
いかがでしょうか?諸外国に比べて導入が遅れていた日本でも、CLTは安全性や快適性など大きなメリットを生むことが知られ、また持続可能な社会に貢献するものとして活用が推進されています。しかし課題も多いため、一般の戸建て住宅においては本格的な普及は進んでいません。価格や技術面でCLTの課題をクリアしたライフデザイン・カバヤの「CLTハイブリッド構法」は、建築業界内だけでなく一般戸建住宅においてもCLTの利用促進をはかり、多くの人にCLTの認知を広げる大きな一歩になるものと確信しています。